妊娠がわかったその時から始まる、赤ちゃんとの日々。日本では、お腹にいる赤ちゃんが無事に成長し安産できるよう祈願する「戌の日」から、生まれてからは成長の節目に、さまざまなメモリアルイベントがあります。
どれも健康な成長を祈願したりお祝いしたり、赤ちゃんとその家族にとっては大事なものばかり。
それぞれの意味を知り、ぜひともご家族の大事なライフイベントとして取り入れてほしいものです。
–妊娠中–
妊娠が分かったとき---。それは本当にドラマティックな瞬間です。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中で過ごす時間は、「十月十日(とつきとうか)」。豆粒のように小さい赤ちゃんが、2週間ごとの検診でどんどん大きくなっていく過程は、まさに神秘そのもの。私も妊娠中は、お腹の中で「ひとりの人間をつくっている」という感覚が本当に不思議でなりませんでした。
お母さんは自分の体も変化し、身重になり、赤ちゃんを授かった喜びだけでは済みませんが、それでも、自分のお腹の中で赤ちゃんを育てる、その不思議で貴重な時間を楽しんでくださいね!
戌の日(いぬのひ)/帯祝い(妊娠五カ月め)
妊娠がわかって最初におこなうイベントが、この「戌の日」の安産祈願。
妊娠五カ月めの戌の日 (=干支の十二支を日々にあてはめたもので、戌の日は12日ごとに一度めぐってきます) に、お腹に宿った小さな命を祝福し、無事に生まれてくることを願いながら、腹帯を付ける日です。 ちょうどお腹も大きくなりはじめてくるころなので、帯をしめることでお腹を守ったり、支えたり、冷えを防ぐ、などの意味があるとされています。
犬はお産が軽くて安産、また多産でもあることから、「戌の日」に儀式をおこなうようになりました。
▶▶戌の日、何をする??
具体的には、戌の日は神社やお寺に参拝し、初穂料(お布施)を納めてお祓い、祈祷してもらい、お守りや腹帯、授与品を受け取ります。または、自宅から腹帯を持参してお祓いを受ける人もいるようです。
元来の戌の日の意義は、「腹帯を巻いて安産祈願をする」ことにありましたが、実際に神社やお寺でもらってきた腹帯を巻く儀式までする人は、最近ではかなり減っているようです。今はマタニティのガードルなど、より快適で実用的なものがあるので、そういったアイテムを日常的に使っている人が多いことでしょう。
ただ、腹帯は巻かないにしても縁起物ですので、この戌の日のお祓いはぜひ受けましょう。
もちろん、戌の日でないと安産祈願が受けられない、というわけではないので、何よりも無理をせず、体調や予定を優先して、お参りの計画をたててくださいね。
▼
▼
▼
–出産~1歳誕生日まで–
赤ちゃん誕生! 赤ちゃんがこの世に生まれ出てきた、記念すべき日! これまでは誕生日というと「1才年を重ねる」といった感覚しかなかったのですが、自分が出産した側を体験してみると、「誕生日」ってこんなにも尊く神聖でありがたいものだったんだ!と、改めて気づかされます。
お七夜(生後7日め)
赤ちゃんが生まれた日も含め7日めにするお祝い。無事に生後7日めを迎えたことを祝い、名前を与え、ひとりの人間として認めるための儀式です。医療が発達していなかった時代には、生まれて間もなく亡くなる赤ちゃんがたくさんいたため、生後7日たつまでは名前をつけなかったことに由来します。お七夜ではこの命名式がメインのイベントになります。
▶▶お七夜、何をする??
半紙や既製の命名書に筆で名前と生年月日を書き、神棚や仏壇などに備え、無病息災を願います。7日めは退院直後でもあるため、盛大にお祝いということではなく、やるにしても両家の親を招く程度の内輪で祝うのが一般的です。
正式には命名書は奉書紙を3つ折りにしてさらに包みますが、略式として市販の命名紙や半紙を用意してもOK。赤ちゃんの名前を真ん中に、生年月日と、両親の名前、続柄(長男・次女、など)を書きます。
正式な命名書の場合は、きちんと三方にのせて神棚や床の間に飾ります。略式の場合も、神棚や床の間の鴨居に貼ったり、家の中の目立つ場所に貼りましょう。だいたいお宮参りまでの間飾っておくのが一般的です。飾り終わったら、大事にとっておきましょう。
—その他この時期にすること—
▶︎出生届の提出:
生後14日以内に役所・役場に提出。届出には、退院時に病院から渡される出生届と出生証明書のほか、母子手帳、印鑑などが必要です。
▶︎お祝いのお返し:
出産祝いをもらったら、一カ月以内に内祝いを送るようにしましょう。内祝いの品にかけるのし紙には「内祝」と表書きし、赤ちゃんの名前を書き入れます。名前にはふりがなをふっておきましょう。金額の目安は、だいたいいただいたお祝いの半額程度、と考えて。
▼
▼
▼
お宮参り(男の子生後31日め/女の子生後33日め)
生まれた土地の氏神様に赤ちゃんの誕生を報告し、健やかな成長を祈る行事です。一般的には、男の子は生後31日め、女の子なら生後33日め、に参拝するのがよいといわれていますが、日にちにこだわることなく、お母さんと赤ちゃんの体調を最優先に、あとは季節も考慮して行きやすいときに行きましょう。
▶▶お宮参り、何をする??
神社への参拝が基本です。 お宮参りはお賽銭を入れて礼拝するだけですませてもよいのですが、希望すればお祓いや祝詞(のりと)奏上をお願いすることもできます。 お祓いを受ける場合は初穂料(5000〜1万円が一般的。神社にもよる)を納め、お祓いを受け祝詞(のりと)を読み上げてもらい、お守りや記念品などを受け取ります。参拝する神社にとくに決まりはなく、 近年では有名な神社でお宮参りをするご家庭も多いようですが、住んでいる地域の神社にお参りすることが本来のお宮参りの趣旨。 近所の神社や、たとえばお母さんが産後の帰省中ならばご実家近くの神社などでもかまいません。行く前に、お祓いを受けるならば時間帯や初穂料、事前予約がいるのか、などを事前に確認しておきましょう。
お宮参りでは赤ちゃんにはお祝い着を着せ(和装または、ベビードレス+ケープ)、お祓いを受けるさいは、父方のおばあさまが赤ちゃんを抱っこする、という習わしがあります。昔はお宮参りの時期はまだお母さんの出産の忌みが終わっていないため神社への参拝には行けなかった、といったことから、父方の祖母が抱くというしきたりになったようです。
現在では誰が儀式中に赤ちゃんを抱くかはさほどこだわらなくてもいいようなので、お母さんご自身が赤ちゃんを抱っこしても構いませんが、おじいさまおばあさまの世代ではこだわる方がいらっしゃるかもしれませんので、事前に相談するとスムーズです。
おじいさま、おばあさまもご招待したのであれば、お宮参りのあと、そのまま皆で祝い膳を囲むのもいいですね。自宅で仕出し料理や、外食でも。神社から移動しやすく、また、お座敷の席を予約しておくことをおすすめします。また、スタジオなどで記念写真を撮るご家族も増えてきています。スタジオによっては、写真撮影の特典でお宮参り時に赤ちゃんの衣装がレンタルできるプランを用意しているところもあるようなので、そういったものを利用するのも手ですね。
▶▶ お参りでの祝い着、ご両親の服装
赤ちゃん自身は、白羽二重地、もしくは白いベビードレスを内着として着せます。神社で参拝するときには、絹織物、男の子は光沢がある羽二重(はぶたえ)地の紋つき、女の子は縮緬地に花柄などをあしらったお祝い着を、父方のおばあさまに抱っこされている赤ちゃんの上からかぶせます。祝い着は母方の実家から贈られるのがならわしだったようですが、今ではレンタルを利用したり、ベビードレスにケープを着せて参拝するケースも多いようです。
お宮参りの大人の服装は、赤ちゃんを抱く父方のおばあさまは色無地紋つきの着物か、訪問着が一般的。お父さまはダークスーツ、お母さまもスーツかワンピース、和装するなら訪問着が適しています。
▼
▼
▼
お食い初め(生後100日ごろ)
お食い初めは、赤ちゃんが「一生食べ物に困らないように」との願いをこめて、 初めてのご飯を食べさせるお祝いの儀式をします。赤ちゃんの乳歯が生え始める生後100日ごろにおこなわれます。
地域によっては110日めであったり、120日めであったりするようですが、いずれにせよまだ赤ちゃんは食べ物を口にできない時期ですので、食べさせるマネ、をします。「歯固め」「箸始め」「箸ぞろえ」、または、生後100日前後なので「百日(ももか)の祝い」などと呼んだりもします。
赤飯や尾頭つきの焼き魚などを祝い膳として用意し、祖父母など集まった親族のうち年長者が赤ちゃんの口元に箸で料理を運んで、食べさせるマネをします。このとき、赤ちゃんが男の子なら男性に、女の子なら女性に、この役割をお願いするのがしきたり。
▶▶お食い初め、何をする??
昔はこのお祝いには親戚知人などを招いていたようですが、最近では赤ちゃんとご両親だけ、もしくはおじいさまおばあさまなど近いご家族だけを招待して行うことが多いようです。
赤ちゃんには「お祝い膳」を用意し、赤ちゃんの口元に箸を運んでたべさせるマネをする役目は、赤ちゃんと同性の家族で一番長生きしている方、がするのが一般的です。
▶▶お祝い膳の献立
赤ちゃんに準備するお祝い膳は、お頭付きの焼き魚をメインとした「一汁三菜」。
赤飯(白いご飯でも)、尾頭つきの焼き魚、香の物、煮物、吸い物が基本です。「めでたい」の意味で鯛が一般的ですが、地域によって違う魚のことも。吸い物は、鯛の身が入ったものや、はまぐりの吸い物が一般的です。
このほか、「石のようにじょうぶな歯がはえるように」との願いから小石を用意したり、「しわができるまで長生きできるように」と梅干しを添えるような地域もあるようです。住んでいる地域のならわしを聞いておくとよいでしょう。
こだわるならば食器も正式な漆器、箸は柳の白木で両端が細くなっている祝い箸、お椀は鶴や松などが描かれているものがよいでしょう。ただ、自宅で行う場合はそこまで揃えなくても大丈夫。大事なのは「お祝いの気持ち」ですから、ご家庭にある食器で十分です。
レストランやホテル、お近くの料亭などで「お食い初め会食プラン」といったようなものを用意している場合がありますので、そういったものを利用するのもおすすめです。
▼
▼
▼
ハーフバースデー(生後半年)
生後6カ月ともなると、赤ちゃんもいろんなことができるようになってきます。このハーフバースデーは、今となっては日本でもよく聞くお祝いとなっていますね。
この「ハーフバースデー」、アメリカやイギリスが発祥かと思いきや、実はアメリカ、イギリスでいうところの「ハーフバースデー」とは、定義がまったく違うのです!
アメリカ、イギリスなどでは夏や冬のお休みが長いため、その期間に誕生日を迎える子供達はなかなかお友達にお祝いしてもらえません。そこで、誕生日の半年前もしくは半年後に、学校のみんなでお祝いしよう、というのが、そもそもの「ハーフバースデー」の定義。これが、日本では「生後6カ月をお祝いしよう」という意味に変貌し、今、定着しつつあるのです。
▶▶ ハーフバースデー、何をする??
とくに、これをする、といった決まりごとはありません。家族写真を撮ってもいいでしょうし、ご自宅で近年流行りの「おひるねアート」に挑戦してみても!
出産祝いなどでいただいたおもちゃや、普段使っているおもちゃ、スタイ、お気に入りのタオルやお布団を使ったアートは、メモリアルな一枚になること間違いなしですね!
おうちにあるもので気軽にチャレンジできるお昼寝アートから、最近では写真スタジオでも扱っていたり、おひるねアート専門の写真館まであるようです! SNSでみんながどんなものを使ってお昼寝アートを作っているか、アイディア探しも楽しそうです。
また、この頃には離乳食をはじめている赤ちゃんも多いため、離乳食を活かしたケーキを作って、食べさせてあげてお祝いする人も多いようです。お豆腐やおかゆを土台に、人参やほうれん草などをすりつぶしたもので彩りを加え、かわいくアレンジ!
この世に生まれてきてからの半年、赤ちゃんのなかでは大変な成長、進歩、変化がおこっています。できるようになってきたこともたくさんあるでしょう。ここまでの赤ちゃんの無事な成長を振り返り、喜び、かみしめ、お祝いする・・・こういった節目のイベントは、いくつあってもいいですね!
▼
▼
▼
▼
1歳のお誕生日
さぁ、赤ちゃんが生まれてから、1年! 赤ちゃんの成長を喜び祝い、ここまでがんばってきた自分たちを振り返ると、やはり最初の誕生日は感慨深いものとなるでしょう。
▶▶一歳誕生日、何する??
まだ1歳ですと、赤ちゃん自身はパーティーの意味も意義もわかりませんので、これはお父さんお母さんができる範囲で、思い出となり、楽しめることをすればいいと思います。写真を撮ったり、お食事に出かけたり。ご家庭で赤ちゃん用に作ったスマッシュケーキを汚れ覚悟で自由に食べさせてみる、という演出は、海外では定番の1歳の誕生日の楽しみ方です。
日本の伝統的なものでいえば、一升餅を背負わせる、といったものもあります。
—日本ならではの一歳のお祝い—
▶祝い餅
初めて迎えるお誕生日に、日本各地で古くからおこなわれてきた儀式が、「祝い餅」です。一生食べ物に困らないようにとの願いをこめて、一升の餅米で大きな餅をつき、これをふろしきなどに包んで赤ちゃんに背負わせます。
または逆に、どんな困難も乗り越えられるようにと願いながら、一升餅のうえに赤ちゃんを立たせて餅を踏ませる地域もあります。
▶選び取り
男の子の場合はお財布、そろばん、筆、米などを、女の子の場合には糸や針、ものさしなどを赤ちゃんの前に並べておき、赤ちゃんがどれを最初に手に取るかで将来の職業を占う儀式です。
▶▶1歳になった赤ちゃんに贈りたいベビードレス・ベビー服!
1歳のお誕生日はやっぱり特別だから! パーティーやお食事会、または特別なことはしなくても、おうちでキュートな赤ちゃん時代を記憶に残す写真を撮りたい! そんなときは、赤ちゃんを思いっきりドレスアップして!
赤ちゃんと初めて迎える、「初⚪︎⚪︎」
生まれる月により迎えるタイミングが異なりますが、赤ちゃんが初めて迎える「節句」、「お正月」も、とてもメモリアルなイベントになります。ただ、どちらも、生後すぐに迎えてしまう場合は他のお祝い行事と重なったりして慌ただしいため、翌年に持ち越してもいいようです。
初正月
赤ちゃんが生まれて初めて迎えるお正月。一般的に、生後30日がたち、お宮参りをすませたうえで初めて迎えるお正月を「初正月」といいます。
昔は生まれた日からお正月までが1才、以降お正月を迎えるたびに年を重ねる、という、お正月を基点に年齢を数える「数え年」という習慣であったため、とくにこの「初正月」は今の誕生日といった位置づけで大きな意味をもっていました。今でも地域によっては昔の風習の名残で、初正月を盛大に祝うところもあるようです。
現在では赤ちゃんの誕生日に満年齢でお祝いしますが、初正月に赤ちゃんを邪気から守るために、男の子には破魔矢(はまや)を、女の子には羽子板を贈る、という風習がまだ残っている地域もあります。
▶▶破魔矢と羽子板
どちらも、赤ちゃんの邪気を払い、健やかに成長するように、との願いが込められているものです。
男の子の初正月に破魔矢が贈られる風習は鎌倉時代の武家の習わしで、破魔矢を飾って邪気を払いすこやかな成長を願ったことに起源するといわれています。
一方女の子の羽子板は、江戸時代から女の子の遊びとして親しまれた羽根つきが、「邪気をはね(羽根)のける」という意味に通じることから、お祝いに羽子板が飾られるようになったとのこと。
どちらも、12月13日頃から1月15日頃まで飾るのが一般的です。
ベビーのお父さん、お母さんがそういった風習を知らず、お祖父様お祖母様が当然のように準備を進めていてびっくりした!といったようなケースがけっこうあるようですので、少しでもそういった風習があることを知っておくと、「破魔矢」や「羽子板」がお祝いに贈られてきても、さほど驚かなくてもすみそうですね。
初節句
女の子のお祝いは3月3日「桃の節句」でひな人形を飾り、男の子のお祝いは5月5日「端午の節句」で鎧兜やこいのぼりを飾ります。どちらも子供の成長に感謝し、厄を払い、これからの健やかな成長を願う行事です。赤ちゃんが誕生して25日を過ぎていて、初めて迎えるものを「初節句」といいます。2月生まれの女の子や4月生まれの男の子など 生後1〜2カ月で節句の日を迎える場合は、他のお祝いイベントと重なったり、準備も大変なため、「初節句」は翌年に延ばしていいようです。
男の子には「鎧兜」「武者人形」「鯉のぼり」、女の子には「雛人形」を贈ります。これらの物が身代わりになって、子供を災いから守ってくれるとされています。かつては母方の実家から贈られる習慣がありましたが、今ではその辺のルールはとくになく、両家で折半したり、その辺はそれぞれのご家庭によるようです。
それぞれ節句の飾りは3週間ほど前から飾って、赤ちゃんの成長を祈願しましょう。節句が終わったら、飾りはすみやかにかたづけます。また、初節句には、ぜひ祖父母などを招いてお祝いしましょう。
こうしてみると、赤ちゃんがお腹に来てから1才の誕生日を迎えるまで、 赤ちゃんの成長と健康を願う日本ならではの伝統行事がたくさんありますね!
そこをすぎると、毎年やってくる節句、お誕生日、あとは七五三や入園・入学・卒業、といったセレモニーが、お子さまの成長を感じる節目となってきます。
赤ちゃん期だからこそのライフイベントをご紹介しましたが、大切なのは無事に成長してきたことへの感謝、また、今後の成長も願う気持ちですので、お父さんお母さんが無理することのない範囲で取り入れて、 ぜひご家族の素敵な思い出を作ってください!